アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品「BIUTIFUL」観ました。
一ヶ月前に。
レビューに纏めようとしてすさまじく時間かかっちゃった…
初めて鑑賞したときより、二度目三度目のほうが見終わったあと温かな気持ちになるというふしぎな映画でした。
こまごまとしたレビューは以下。
とにかく胸の痛い映画だった。
余命二ヶ月のウスバルにのしかかる課題の多さ…
元妻のマランブラは双極性障害(いわゆる躁鬱)で情緒不安定。
子ども達もウスバルも彼女を愛しているし、信じたい気持ちがあるのに、
マランブラの病が一緒に暮らすチャンスをことごとく壊してしまう。
愛があれば何でも出来るわけではないんだね…それでも愛することをやめられない。
ウスバルは始終人のために奔走するけれど、彼を動かしているのは崇高な思想や倫理観や、ましてアガペーなどではなくて、近く手の届くところにいて苦しんでいる身内たちの困難を少しでも軽くしようという気持ちな訳で…
ウスバルは出自・仕事ともにスペインの半地下のような場所にあって、
不法滞在して劣悪な環境で働く人間達にシンパシーや連帯感を感じるゆえに
他人事を他人事と切り捨ててしまえない。
それが悲劇を生みもするし、誰かの心を動かしもする。エンディングのイへのように。
俳優達の演技にもすさまじいものがあった。
マランブラは笑うときに「フガッ」と品なく鼻を鳴らすのだけど、その病的な異様さがとても演技に見えなくて。コントロールのきかない自分の精神でも何とかウスバルや子ども達を愛そうとする姿もいっそう哀れで泣けました。
この作品ですごくいいなーと思ったのは、物語の語られる視点がウスバルの一人称と三人称の間を絶妙に行き来するところ。彼の人生に入り込んだように、臨場感たっぷりに鑑賞できた。
音響や音楽もウスバルに寄り添うみたいでしたし。抱きしめた相手のくぐもる笑い声だったり、心象的なインストゥルメンタルだったり、耳が馬鹿になって人と意思の疎通の取れないような轟音のクラブミュージックだったり。
今年見た映画の中では個人的に現時点ベストです。
ただ露骨に痛々しかったり気持ちの悪い場面もガンガンあるので、嫌いな人は嫌いだろうなーとも思います。